ADVICE
SHOES MAINTENANCE
 
シューズの変遷
 

アウトドアのシューズも、変遷の激しいアイテムです。はるか昔は、といっても60年代初めのころはまだ履いている人もいましたが、登山靴の底は、厚い革に鋲(ビョウ)を打った鋲靴と呼ばれるものでした。鋲には、ムガー、クリンカー、トリコニーなどの種類があり、これを縦走とか岩登りなどの目的に合わせて、打ち分けていました。少し前までの、軽登山靴の土踏まずに付いていたのが、トリコニー型の金具で、丸太などに乗った時の滑り止めでした。大正から昭和の初めころの記録を読むと、梓川に張ったテントの前で「明日の登攀に備えてトリコニーの爪を研ぐ」なんて表現があったものです。鋲靴は重く、硬いところではショックが大きく(駅のホームを歩くと、すごい音だった)、鋲が抜けやすい、雪の上では冷えやすい、などデメリットが大きく、ゴム底の靴に取って代わられました。

ゴム底の登山靴は、ゴムの質と接着剤の問題で、当初はあまり信頼されていませんでした。イタリアのメーカー、ビブラム社を創業した、ビッターレ・ブラマーニ氏が、登山靴用のゴムソールを完成させました。これが世界的に使われるビブラムソールです。山で友人が亡くなったのをきっかけに、安全なソールの開発に取り組んだブラマーニ氏は1937年にほぼ現在と同じデザインのゴム底を完成させました。当初はあまり注目されなかったのですが、1954年のイタリアK2遠征隊がこのソールを使用し、世界的に認知されるようになりました。当時は革の本底とゴムを着ける接着剤が未完成だったので、ゴムソールを靴底に縫い付けたりしていました。グリップ力、耐摩耗性、重量など、すべての点で鋲靴を越えたビブラムソールは、多くのアウトドアシューズに使われていますが、つい最近まで登山靴用のビブラムソールのパターンは、鋲靴に打たれた鋲のパターンとほぼ同じなのです。

アッパーの素材も、以前は牛革がメインでしたが、現在ではほとんどナイロンを主体にした科学繊維になっています。牛革は、通気性や保温性があり、足になじみやすい、などの利点がありますが、反面、重い、手入れが大変、良い革は高い、職人が減った、などの理由でいまや絶滅寸前品種です。ナイロンアッパーの靴は、軽い、品質が均一で安い、手入れが簡単、などのメリットがあります。保温性などは、裏側に保温素材を入れるなどして解決しています。1979年にアメリカのダナー社が、世界で最初にゴアテックスの靴である、ダナーライトを完成させてから、アウトドアシューズにもゴアテックスが多用されるようになりました。ダナー社はゴアテックスと共同で、ゴアブーティを開発します。これはソックスの形をしたゴアテックス性の袋で、一番上の足首部分ではアッパーと一緒に縫い留められていますが、底の部分では縫い留めてありません。これで靴の外側に縫い目があっても、完全防水で透湿性のある靴を履くことができるようになったのです。79年最初のロット100足の内の1足であるダナーライトを履いて、初めて雪の中を歩いたとき、こんなに軽くて暖かい靴があったのか、と本当に驚きました。濡れない、ムレない靴は、足が冷えないので、結果的に暖かいのです。

靴の素材が変わることにより、製造方法も変わってきました。革をメインに使っていたときはアッパーをなんらかの方法でソール部分と縫い留めていましたが、現在では多くの靴が、インジェクションという成型されたソール部分に、アッパーをはめ込むようなかたちで作られています。この方法は、ソールと底のパーツが一体化しているので、ソールのはがれが無い、縫い目がないので底からの水漏れが無い、大量生産ができてコストが下がる、などのメリットがあります。

どんな良い靴も、足に合わなければ苦痛の元です。特に登り下りのあるような所で使う靴は、下りのことも考えましょう。下りでは靴の中で足が前に行くので、爪先を痛めないためには余裕が必要です。靴下を履いて足を前に出し、後ろに指1本分の隙間があるのが適正サイズです。下りの時に靴の中で足が前に出ても、指1本分は空間があるわけです。下りの時には、爪先から紐をきつく結ぶことも忘れずに。

 
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